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1991-2017

仕事をする僕の話

物語(フィクション)

「では、十三時にそちらへ向かいます。昼食が終わって、一休みなさった頃合いになりますかね。いかがでしょうか?もう少し遅らせましょうか、ああ、構いませんか。有難うございます。はい。失礼します。」

僕はこれから融資の相談をするために商店街へ行く準備を始めた。
時間は十三時。「昼頃に」なんて曖昧な約束をしてはいけない。
ある人の言う「昼」とは正午きっかりかもしれないし、十五時までを昼と思っている人だっている。
僕としては十一時から十三時が「昼」なのだと考えて過ごしてきたのだが、この仕事をしていて自分の固定概念や思い込みというものは他人との不和を招くことを痛いほど学んだ。自分の経験で押し固め作り上げた偏見のコレクション…常識とは誰にもは通用せず、時として相手を怒らせてしまうのだ。時間のことがその例だ。些細なことでも後に大きなことに繋がる。
面倒事は元から嫌いだった。何事も穏便に終わらせたいのだ。
今回もそうする筈だった。
相手が誰であろうと感情を出したほうが負け。そう、「負け」。
勝敗が出てくるからには穏便にというのはなかなか難しくなる。だから僕は平常心。何をやっても怯まない、自分のことで喜ばない。
そうすると大体は「興醒めです」とでも言うかのように勝手に切り上げてくれるのだ。
こんな処世術を二十五歳の僕が身につけ、これで良いと思っているのだから今後もそれは変わりないだろう。